タイムカプセルに閉じ込めた「永遠」の話
実家に帰った時、1枚のハガキが届いていた。
「成人式のお知らせ」
そうか、もうそんな時期か。
綺麗なワープロの無機質な文字で書かれた、1枚のハガキ。同級生にとっては、成人式の開催という事実のみを伝えるための簡潔な紙にすぎない。しかし、私にとってはもうひとつ、私にしか知りえない記憶を思い出させたのだ。
それは、成人式でタイムカプセルを開ける、ということに関係している。
あの日、タイムカプセルに埋めたひとつの封筒。
「永遠」を信じていた私が、未来の自分への手紙と、カラー写真を入れた封筒。
あの日のカラー写真に映る「あのひと」は、今も色褪せず笑っているだろうか。
それは小学生の頃。
私は、嵐が、特に翔くん(と読んでいた)が本当に大好きだった。自他ともに認める嵐オタクで、毎日嵐の話ばかりしていた。
私にとって初めての自担で、ずっとずっと永遠に大好きでいるんだと思ってた。だって、いてくれて当たり前、帰ったら嵐の番組を見るのが当たり前、音楽を聴くのが当たり前……いわば、活動する上で必要不可欠な酸素のように、あるいは日曜の夜に流れる、ちびまる子ちゃんやサザエさん、ジャンプに載っているこち亀のように、なくてはならない存在だった。
だから、大人になっても好きであるのが当たり前だと思っていた。タイムカプセルに入れた手紙には、こう書いたのを覚えている。
「今でも嵐が好きですか(笑)」
(笑)の文字からは、好きでいることを信じ、屈託のない目で未来を見ている過去の私が見えてしまう。
当然、20歳になってもずっと好きでいるんだ、って少しの疑いもなく思っていたから、タイムカプセルに「確認」の手紙と翔くんの顔写真の切り抜きを入れたのだ。
今の私を見たら、がっかりするかな。
永遠なんて、なかった。
どんな時だって嵐が中心だったのに、たくさん幸せにしてもらったのに、いつの間にか私は自分から離れていった。
勝手だよね。
自分で好きになって、自分で離れて。
アイドルという存在自体に対して、自分を投影して、勝手に好きになったり離れたりすることに罪悪感を感じること自体が傲慢なのかもしれないけど。
それは本当に突然だった。
NEWSを好きになった。
(好きになった経緯は、一番はじめの記事に書いた)
気持ちが揺らぎ、そして私の手元からするすると嵐の存在がこぼれていくような感覚になった。
普段歩いていた家に向かう道が、ある日突然崩落してしまったように、私は嵐に対して行き場所をなくしてしまった。本当は、回り道をしたりまた新しい道ができるのを待っていたりすることもできたはずなのに、私はそこで歩くのを、やめた。
「あんなに好きだったのに、、、」と、自分の気持ちが信じられなくて、疑心暗鬼になった。罪悪感に苛まれて、「NEWSを好きになってはいけない」という苦しさに押し潰されそうになった。
でも、それに反比例して、新鮮な「好き」の気持ちが抑えきれなくなった。NEWSを見ている私の心は、幸福感という言葉で溢れていた。
振り子というのは、こちら側に大きく揺れるほど、あちら側にもより大きく遠ざかっていく。
大好きだったはずの嵐を見ると、「ごめんなさい、あんなにも好きだったのに、ごめんなさい…………」と、辛くて、申し訳なくて、見たくなくなってしまった。見られなくなった。
NEWSを好きになるほど、嵐を見ることができなくなった。
いや、逆かも。
嵐のことが大好きで大切だったからこそ、こんなにも簡単に薄れゆく気持ちを信じたくなかったのかもしれないし、生半可な気持ちでライブに行ったりするのはファンの皆さんにも嵐にも申し訳ないと思った。
そして、NEWSにも、「こんなに揺らいでいる私が好きになる資格なんてあるのかな、にわか、とかじゃなく好きでいられるのかな、」と思っていた。
不器用な私は、どっちも大好きになることが出来なくて、嵐とNEWSを天秤にかける間もなく、嵐側のお皿を、8年間かけて大きくなっていたはずのお皿を、あっという間に取り外してしまったのだ。
取ったお皿の上に乗っていたのは、分銅よりもはるかに黒く重たい罪悪感の塊だった。
でも、時間というものは不思議なものだ。
最近やっと嵐を普通に……もし許されるのなら「おかえり」「ただいま」と声をかけたくなるように……楽しく見ている自分がいる。
あの時より少し年齢が上がった5人は、あの時と変わらずテレビの中で笑っている。踊っている。
強いて言うなら、あの時より少し角が取れて丸くなったかな?
やっぱり、かっこいいよ。
あの時みたいな熱量に戻ることはできないし、お茶の間と同じような応援しかできないかもしれないけれど、嵐には感謝しています。
ありがとう。
でもね、ごめんとは言わない。
それを言ったら、今の私が間違っていると言ってしまうようなものだから。
どうしてかって?
私は今、とっても楽しい。
あの日タイムカプセルに願いを込めた。
この気持ちが永遠に続いていますようにと、翔くんの写真を入れた。
あの日描いた未来のようにはならない、という使い古したような歌詞の通りになった現在。
でも、私の現在は楽しさに満ちている。
今の私の選択が正しいのか、なんてわからない。
でも、NEWSが大好きということだけはわかってる。
きっとこれからの私が、たくさんNEWSと幸せな思い出を作って、選択肢を正しいものにしていくんだ。
もし、過去に手紙を書けたのなら、
嵐を好きであることを疑わない無垢な少女に、私は何を書くだろうか。
あの時の自分へ。
想像もできないでしょうね。聞いたらきっと驚くと思う。
今、私は嵐の後輩グループ、NEWSが大好きです。
あなたが嵐に向ける熱量と同じ……いや、それ以上に大好き。好きに程度なんてないんだろうけどね。
でも、今あなたが嵐を好きでいることは全く間違いじゃない。
今すぐNEWSを好きになれ、なんて言わないし、嵐を好きな理由を難しく考える必要はない。
だって、ただ好きなんでしょう?そこに理屈なんてなくてもいいんだ。好きでいることに善悪なんてないから安心してほしい。
これから、いっぱいいっぱい幸せにしてもらってください。嵐はあなたを絶対幸せにしてくれるから、今は迷わずついて行ってください。「永遠」がないからこそ、今の一瞬を全力で幸せに感じてください。沢山の素晴らしい光景や、思い出をいっぱい焼き付けてください。
嵐を好きになり、離れ、そしてNEWSを好きになって、やっとわかったこと。
永遠っていうものは、何の保証もない脆いものだ。
でも、「永遠に好きでいたい」と思えるくらいに熱中できるということは物凄く楽しい事じゃない?
「永遠に好きでいたい」と思えるほど好きになれたことは、意味のあることじゃないかな。本当に幸せな事じゃないかな。
だから、
今の私はNEWSを「永遠に」応援したい、と思ってる。
数ある人やグループの中で、こんなにも大好きになれる存在を見つけられたことを大切にしよう。
永遠がないからこそ、楽しい時、大好きな時に全力で楽しく過ごそう。
そして、沢山の思い出を作ろう。
顔を見ただけで嬉しくなるような、
曲を聴くだけでライブの風景が浮かび上がるような、
歌声を聞くだけで楽しくなるような、
セリフを聞くだけで当時を思い出せるような、
話題ひとつで何時間も話し込んでしまうような、
そんな、鮮やかな思い出をいっぱい作ろう。
国立のライブ、復活当選で入った天井席。
上を見上げれば星空が、下を見れば緑の星空が、満点の光を湛えていた風景。
横風で風船が全部右に流れて、掴めないね、なんて笑った時間。
ムービングステージが音楽とともに迫ってきて、頭上を通ったこと。メンバーに叫びながら手を振ったこと。
嵐と過ごしたひとつひとつが、あなたにとって色褪せない思い出となる。
永遠はない、と言ったけど、思い出は何度だって蘇る。
今の1秒が、忘れられない宝物になるかもしれない。
あなたのジャニオタライフが幸せなものでありますように。
キミに幸あれ!!!!
未来の私より
タイムカプセルの写真は色褪せてしまったかもしれない。
でも、鮮やかな思い出は私の心にずっとしまわれている。タイムカプセルみたいに、掘り起こそうと思えばいつだってあの日に戻れる。
思い出まで色褪せなくて、よかった。
これからNEWSが見せてくれる一瞬一瞬も、きっと思い出になっていく。私の心のカプセルの中に、ひとつひとつ宝物を詰め込んでいこう。
永遠に好きでいられないかもしれないから、好きな時に好きなだけ思い出を仕舞っておこう。
感情は永遠じゃなくても、思い出は長く長く残るはずだから。
アイドルを好きになるってことは、自分勝手だけど本当に幸せだ。
今日も明日もNEWSを好きでいたい。
そして私は、今日も明日も、心のタイムカプセルが満ちる日を夢見ている。